簡素な生活。

サカタカツミのブログ。連載のサブノートが中心。すべての働く人たちに。役に立つ話も立たない話もあり。

仕事を深く考えるために。

世のなか食のなか

世のなか食のなか



暮しの手帖に連載されていた記事が単行本になっていた。この連載が読みたくて暮しの手帖を購入していたし、連載すべてを再読したくて雑誌そのもののバックナンバーも購入して揃えてある。それくらい私にとって興味深い内容であり、関心事である。タイトルをみてわかる通り、食とそれを取り巻くいろいろなことについてのドキュメンタリー。良質、そして、とても考えさせられる内容になっている。筆者は冒頭、この本の原点をこう述べている。食べる営みをないがしろにしてもよい理由は人生に一つもない。

海・山・里の三編にわかれ、塩づくり、鰹節、ごま油から、乳牛について、駅弁、野菜販売、はては種苗販売にいたるまで、口に入るものとそれをとりまく環境について、詳細にかつ冷静に書き留めていく。そこにつまびらかにされる事実は、薄ぼんやりと認識していることであることも多い。しかし、薄ぼんやりしていては取り返しがつかなくなる可能性があること、もしくは、もうすでに後戻りができなくなってしまっていることもたくさんあって、読んでいるうちに「しまった!」と思ってばかりになってしまう。

だからといって、単純に昔は良かった、機械化され近代化されたものはダメだと書き、読み手を絶望させる内容ではない。むしろ、伝統的なモノ作りを再構築し、現代の技術や流通、そして消費者のニーズに合わせたものとして提供するために頑張っている人たちばかりである。読み進めるうちに、様々な問題はあるけれども、それを解決するための努力や工夫に勇気づけられ、同時に、ここで頑張っている人たちを応援しようという気持ちになる。なにより、紹介されている食の多くが「美味そう」なのだ。

仕事に就くうえで、ある種の使命感を持ち合わせたいと考える人は少なくない。しかし、多くは地に足のつかないもので、机上の空論になりがちである。その理由は、この本に紹介されている人たちのように「覚悟と矜持」の両方を備える「勇気」がないからなのかもしれない、と感じた。美味しいものを提供するために、この本に登場する人たちは文字通り「命がけ」である。仕事というものを深く考えるためにも、多くの人に読んで欲しい一冊だ。ただし、空腹時には読まないこと。お腹が空きすぎる。