読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

簡素な生活。

サカタカツミのブログ。連載のサブノートが中心。すべての働く人たちに。役に立つ話も立たない話もあり。

哲学探究は素晴らしい本。

哲学探究

哲学探究



まあ、ヴィトゲンシュタインについて語る必要はないと思う。新訳が出たので即購入。翻訳本はドンドン新しい訳が出たら良いのにと個人的には思っている。格調がとか味わいがという意見があるのも理解できるが、書籍は、いや、文章はわかりやすい言葉で書かれているのが一番だ。翻訳する人が理解できる、というレベルのそれでは、残念ながら素敵な頭脳を持ち合わせていない私たちには、まったく楽しむことができない。ご紹介しているこの本は、そういう点で素晴らしい(読み勧められている範囲でだけれども)。

私の書いたものによって、ほかの人が考えなくてすむようになることは望まない。できることなら、読んだ人が刺激され、自分の頭で考えられるようになってほしい。


帯に抜き書きされている「はじめ」の中からの一節だ。しびれるフレーズであることはいうまでもない。最近の書籍を読んでいて疲れてしまうのは「考えなくて良い」という体裁を取って「著者の考えを押し付けてくる」ところにあるような気がしている。これさえ読めばわかる、これだけで完璧、ここさえ押さえておけば良いと。当たり前だが、人生はそんなに容易いものではないし、ビジネス社会もしかり、恋愛に至っては答えなんてあるはずもない。しかし、考えなくてすむようにと、書き手はおせっかいになりたがる。

この本を読んでいると、自分が日々思っていた疑問や、ささいな「ひっかかりのようなもの」が言語化される気持ちよさがある。そして、その延長線上にさらに「自分自身で考える」作業を経ることで、いろいろなことがクリアになっていく。そこに書かれている短い文章、磨き上げられた思考のひとつひとつをトレースすることで、考えることの楽しさを再認識させられる。そう、これこそが「思考法」の本であり(こんなことを言ってしまうと専門家に怒られそうだが)頭に栄養を与える一冊なのだと思う。

343. 私が自分の記憶を表現する言葉は、私の記憶の反応である。


本文からもうひとつ引用してみた。この一節に反応できる人は、ぜひ買い求めるべきだろう。そして、ゆっくりで良いので読み進めること。さらに、繰り返し何度も読んでみることをお勧めする。ヴィトゲンシュタインが望んでいた「自分の頭で考えられるように」きっとなるはずだ。なにより、その行為が気持ちいいことを自覚することができるだろう。そういう意味では、究極のビジネス書なのかもしれない。だって、ビジネスパーソンに求められる最重要テーマでしょ、自分の頭で考えるってことは。一押しの一冊!