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簡素な生活。

サカタカツミのブログ。連載のサブノートが中心。すべての働く人たちに。役に立つ話も立たない話もあり。

仕事術から学ぶべきこと。

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート



松浦弥太郎が好きか、と質問されたら「保留」と答えるしかない。彼の著作はファンというほどではないが普通の人よりは熱心に読んでいる部類だし、まだ彼が注目される以前から彼の存在を気にしていたし、彼の営む古書店には足を運んで、情報カードのケース(彼が特注で作らせたオリジナルだ)も買った。だったら好きなんじゃないのかと問われても、好きとはいえない。私は彼を鵺のような存在だと思っているからかもしれない。

彼の著作を経年で読んでいるとわかるが、彼は筋が通っているようで、それほど一貫性はない。ある時期はベストセラー作家の文体をコピーしたようなテイストで、マヨネーズでおなじみのコピーライターのような視点で風景を切り取っている文章を書いていたし、その延長線上にあったカルチャーは、とても今風だった。丁寧に暮らしましょう、というポリシーを掲げてからも、結局はその時代に応じた丁寧さであり、スタンダードであり、ベーシックだった。

以前にもベニシアさんの映画のレビュー*1で書いたが、結局それが「自分らしく生きる」ということなのだろうなと、最近つくづく思う。松浦弥太郎のそれはベニシアさんのような「固さ」はなくて、むしろとても柔軟だ。時代に合わせて、流行にあわせて、自分の興味にあわせて、自分なりのスタンダードや生き方を「断固として」提示する。その断固さの部分がベニシアさんにとても似ている。結局、以前と言っていることが違っていても、それそのものが「自分らしく」生きているということでもある。

熱心なファンならば「彼は芯の部分は変わらない、誠実で丁寧で、そして、なによりシンプル」というかもしれない。もちろん、一冊一冊の本には学ぶべきところがたくさんある。なので、一冊読むならオススメの著者だ。ただし、深堀りしていく、さかのぼって読む、というのには向かない書き手でもある。そのときそのときが旬であり、ベストであるという、ある意味で「流されないことがセールスポイント」の「流行作家」という、興味深い存在なのだ。

*1:自分らしいことの難しさ。