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簡素な生活。

サカタカツミのブログ。連載のサブノートが中心。すべての働く人たちに。役に立つ話も立たない話もあり。

ひとりでいるための覚悟。

自分自身を信じることはとても難しい。なにかを成し遂げられる人間だと妄想していたとしても、いつでも誰かに寄りかかっていたいし、言い訳をして済むのなら無理はしたくない。できないことに対して、あれやこれやと理由をつけることで、誰かの責任にしてしまう。そうすることで、少なくとも自分自身はある程度傷つかないで済むし、誰かに何かをなすりつけることで、その多くは解決してしまうのだから、まあ、楽なのだ。自分の能力を信じて、思うままに行動することは、普通の人間には相当難しいと思う。

職業としての小説家 (Switch library)

職業としての小説家 (Switch library)

 

新しい書籍が発行されること、それ自体がニュースだという、極めて稀有な存在の作家の自伝的エッセイ。通読していくと、そこには『ひとりでいるためには、どのような覚悟をしなければならないのか』ということ、その刃が突きつけられている状態が続いていく。柔らかな、極めて選び抜かれたラフな言葉によって、受ける印象は人それぞれだとは思うが、少なくとも孤独に耐え、自分を信じ、納得のいく生き方をするためにはとても骨が折れるということを、筆者は繰り返し書いている。その言葉に切り刻まれる。

天の啓示を受け小説を書き始めたと、それこそ物語的なイントロダクションで小説家としてのキャリアを歩み始めた、と筆者はいつも語っている。それはどうやら本当らしいが、その後のキャリアを積み重ねていくアプローチは、極めて用意周到だ。自分が描き出したいものが、自分自身の頭の中にはクリアに浮かんでいる。それをあからさまにするための能力を明確な仮説を立て、それを慎重に実行していくことで獲得していく。やりたいことを実現するために、できることを増やす。これはとても難しいことなのだ。

『職業としての小説家』というタイトルが付いているが、むしろ、何かを生業とすること、その根源のようなものが、わかりやすい言葉で綴られている。場合によっては恨み言が書き連ねられている風にも取れる文章も(批判に関して馬耳東風の印象があったけれども、実際はかなりナーバスになっていたことがこの本で明らかになっている)、味方がいない状況であったとしても、なおそれを乗り越える覚悟が、何かを成し遂げるためには必要なのだということの裏返しであると痛感させられる。生きるための一冊だ。